ステーキ店を譲渡・売却(M&A)するとき〜ステーキハウスは閉店するより売却の方がメリットが多い話〜

時は明治時代から「ビフテキ」の愛称で親しまれ、高級料理の代表として名が高い「ステーキ」。現代では様々な業務形態のレストランが登場し、「ステーキガスト」などのリーズナブルなファミリーレストランタイプや「ウルフギャングステーキハウス」のようなアメリカン王道の高級ステーキはもちろん、「いきなりステーキ」などの立ち食いステーキも当時は話題になりました。近年では、ライザップをはじめとした糖質制限ブームの波にも乗ってダイエットや、トレーニングに効果的な料理としても注目を浴びています。

ステーキハウス業界の市場環境、現状

ステーキ店の市場規模

ステーキ業界は現在約4,000億円の市場規模があります。日本人の牛肉の消費量は年間で約1,300千トン消費されています。ステーキの外食業界も多様化しており、現代ではステーキを取り扱う業種は「ステーキ専門店」「鉄板焼きレストラン」「ステーキファミリーレストラン」「立ち食いステーキ」など店舗の種類は多岐に渡り{高級路線一本}だった昔に比べ、立地に合わせた様々レストランが増えてきました。ステーキといえば「サーロイン」や「ヒレ」のイメージが強いですが、近年では「リブロース」「ミスジ」などのローコスト肉を安く美味しく提供することで利益を出している企業がかなり増えてきています。

ステーキ店の市場動向

2013年の「いきなりステーキ」の登場で立ち食いステーキがブームとなり、糖質制限ダイエットの波にもうまく乗ったことで連日行列が絶えないほど流行しました。この現象により「ファストステーキ」という言葉が生まれ、高級でゆったりとしたレストランで食事をするイメージがあった「ステーキ」に新たな一面が誕生した瞬間でもありました。一方で王道の高級レストランも負けておらず、海外からの高級ステーキハウスの参入「ウルフギャングステーキ」や「ベンジャミンステーキハウス」など1人2~3万円程の客単価の高級レストランも連日予約が埋まっているほどの人気があります。

ステーキの現状

日本では近年「ファストステーキ」が流行しており、手ごろな価格でステーキを食べれるレストランも急増しています。糖質制限ダイエットブームも拍車をかけ、たくさん食べても大丈夫なダイエット食として女性でも300~500gを完食するなど様々な客層に人気があります。「ファストステーキ」の特徴は「安さ」と「無駄を省いたシンプルな提供」です。ライスやサラダを食べず、ただステーキのみを提供することで糖質を抑え女性でもがっつりステーキを楽しめるビジネスモデルになっており、原価の高いサーロインやヒレを看板メニューにはせずに、あえて「リブロース」や「みすじ」などのローコスト肉をメインにし新鮮な状態でカットし目の前で焼くことで、付加価値を見出しました。
「いきなりステーキ」の快進撃に続き、現在では「ニトリのやっぱりステーキ」や「松屋のステーキ屋松」など大手の参入も多くなり、市場はこれからも活性化していく傾向にあります。
  

ステーキ店 M&Aにおけるチェックポイント

ステーキ店は上質な牛精肉を取り扱う高級な店舗のイメージが強いですが、近年の安い輸入牛肉の広まりにより大衆店も多く出店している傾向があります。幅広い客層の利用増加に伴い、M&Aの動向も高級店だけでなく、ターゲット顧客層や店舗コンセプトを明確にしている企業が好まれる傾向にあります。

買い手がつきやすい店舗の特徴とチェックしているポイント

立地

ステーキ店の立地も近年多様化し、立地に合わせたコンセプトを掲げる出店も増加してきました。ここで重要なのは「立地に合わせたコンセプト」を掲げられているか。という部分です。オフィス街ならカウンターメインの「ファストステーキ」・住宅街ならゆっくりできる「ステーキレストラン」、高級繁華街には高品質を提供する「鉄板焼きレストラン」など、
ターゲット客層に合わせたコンセプト設計が重要になります。買い手としては、立地だけではなくいかに「考え抜かれたコンセプト」をチェックしお店の品質を精査しています。

仕入れルートの品質レベルと調理コンセプト

ステーキ店や焼肉店など、精肉の品質がお客様の評価に直結する業態は仕入れ先が重要になります。最近では牛一等買いとして国産和牛を売りにしている高級店や、海外産でも上質な赤身肉の仕入れを売りにしている店舗が目立つようになってきました。M&Aでも独自の仕入れルートを持っている店舗ほど買い手にいい印象を与える傾向があります。一方でなかなか仕入れルートの確保が難しく一定水準の品質を仕入れられない場合でも、調理コンセプトを意識し「ご注文時にカットする」など調理工程を工夫することで、お客様に新鮮な状態でお肉を提供するという付加価値(企業努力)をしている店舗も買い手の印象は悪くないでしょう。

 

ステーキ店売却の注意点

ステーキ店のような牛肉(和牛・ブランド牛)をメインに取り扱う業態において、最も注意しなければならないポイントとしては、「偽装」と「安全性」です。最近では2017年に発覚した都内のステーキ店が米国産牛を黒毛和牛と偽り、偽装販売をする事件が発生しました。一方、安全性の面では2000年代に起きたBSE(牛海綿状脳症 )問題でも様々な企業の偽装が発覚し、食の安全性に対する信頼が大きく揺らぎました。当然ながら食品偽装等はもってのほかですが、買い手としても買収後一定した品質を提供し、お客様に安心していただける店舗運営を目指しているので、安全性に関しましては特に意識していることをアピールする必要があります。

 

ステーキ店M&Aの動向と現状

最近では、いきなりステーキで有名なペッパーフードサービスが、ペッパーランチ事業を投資ファンドへ売却し85億円もの資金調達に成功しています。コロナ渦の現在でも外食産業のM&Aは活発に行われており、特にノンコア事業の外食子会社の切り離し売却が中心となりつつあります。ノンコア事業とはコア(メイン)事業に位置づけられていないリスク分散の為の非中核事業のことで、各企業はコア事業に集中するべく子会社を売りに出し、飲食業専門企業などが買い手に回っています。在宅需要が増加したことでテイクアウトやデリバリー事業への切り替えも盛んに行われており、最近の景気情勢とは逆行する形で、M&Aは活発化しています。

ステーキ業界が抱える課題と対策〜まずは自社の価値を上げる〜

いきなりステーキのファストステーキブームで、新たなステーキの需要が発掘され、高級路線だけではなく今や様々な客層から愛されるジャンルとなりつつあるステーキ店。業界全体の成長率も著しく毎年約10%ほど伸びを続けているところを見るとまだまだ拡大していく可能性を見せている。だからこそライバルも多く、様々な大手の参入が発表されている。ステーキあさくま「やっぱりあさくま」やニトリ「みんなのグリル」など大手の強みを生かした低価格高品質のレストラン戦略を掲げている。そんなライバルと戦うためにもまずは自身の店舗を分析しターゲットを明確にすることで自社の価値を上げていくことが重要です。

 

売上や利益を上げる為にやること

ステーキ店で黒字営業をするためには「売上見込みと原価」のバランスが重要になります。例えばファミリー層をターゲットにした運営の場合、1度に来店する客数が複数になることが多い為、原価に対して利益を低くすることによってお得感を感じてもらうことが最優先です。家族が使いやすい店舗となればリピーターにつながることも多く売上アップを期待することができます。
 

生産性を上げる為に必要なこと

今まで、ステーキ店での生産性アップの手段は「サラダバー」「ドリンクバー」でした。しかし近年になりその「サラダバー」によって空腹を事前に満たしてしまうことにより、メイン料理の満足度が低くリピート率が上がらない現象がありました。その問題を打破したのがいきなりステーキのような「メインのステーキのみ提供」あとの「サラダ」や「ご飯」はオプションで追加料金という斬新な運営方法をとり「ファストステーキ」としてブーム化しました。よってこれからの生産性とは「シンプル化」が大切になります。いかに店舗のメニューをシンプル化し「ステーキ」という確立されたメインディッシュを純粋に楽しめるお店作りがリピート率や生産性を上げるヒントになってくるでしょう。
 

他店と差別化する方法

ステーキ店の差別化は「仕入れ」と「調理法」です。例えば黒毛和牛を一頭買いし、本来ならホテルや高級レストランでしか味わえない希少部位を提供し顧客満足をアップさせた例や、高級牛の切り落としを集め、「味は本格」「価格はリーズナブル」にカットステーキを提供し成功させた店舗もあります。差別化が成功した店舗の共通した特徴は日々分析・改善を行っているところです。仕入先との日々のコミュニケーションはもちろんお客様の声にも耳を傾け付加価値を提供している店舗が、地域で負けないステーキ屋として確立している傾向があります。

ステーキハウス M&Aの成功事例

横浜の8.5坪という小規模店ながら年間売上5,000万(内利益約1,000万円)ほどの業績を出していた店舗のM&A事例です。お祝い事はこの店でというお客様も多く地元から愛されていました。今回はオーナーが高齢で体調不安の為の後継目的での株式譲渡を検討されていました。募集をかけたところ応募が多数あり後継者選定にも余裕を持って選択することができ、オーナーが理想とする経営理念を持つ企業と出会うことができました。