保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園を売却(M&A)させるためのポイント

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園など、保育関連事業には様々な業態がありますが、経営を成功させるためのポイントには共通点もあります。また、業態により異なるポイントもあります。少子化の進む中、どのような点に留意したら、園児が集まり経営を安定させることができるのかについて解説します。

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園の園児募集

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園の経営を成功させるためには、定員充足率(在園児数/定員数)を高めることが大前提となります。どのようにしたら園児を募集することができるのか、説明します。

園児募集と収益化

園児数が少なく、定員充足率が低い場合でも、定員に対する保育士や教諭を配置しておかなければなりません。そのため、園児が集まらなければ、赤字経営になってしまいます。また、保育関連では、園児数に応じて公的な助成金の額が決定されるので、園児を確保しなければ収益化は困難です。また、企業主導型保育園であれば、夜間保育や病児保育などを行った場合には加算の対象となるので、地域のニーズに対応したサービス提供を計画し、その計画に沿った園児募集をする必要があります。

園児募集のポイント

どのようにすれば園児が集まるのでしょうか。園児募集のポイントは、
第一に、募集時に園の特色を伝えることです。園の立地、保育や給食の内容をPRします。例えば、企業主導型保育園であれば、夜間保育、病児保育など、認可保育園では行っていないことが多いサービスを打ち出します。第二に、年齢別の募集対策を行うことです。例えば、こども園・幼稚園では、1歳児の保護者に対しては、「園児募集」のメッセージを伝えようとするよりも、まずは園に足を運んでもらうことを考えたほうがいいでしょう。そこで、子連れで気軽に立ち寄れるようなイベントを企画するのが効果的です。一方、2歳児に対しては、保護者よりも子どもに焦点を当て、園の活動を楽しく体験できるような企画が良いでしょう。3歳児については、満3歳児入園を強化することが重要なので、満3歳児入園にしぼった説明会の開催が有効です。第三に、ウェブサイト、SNS、チラシ、ポスティングなど様々なツールを活用して園児募集を行うことです。ウェブサイトは、園を探している保護者が見ることを意識して、保護者の知りたい情報を載せるように作りましょう。また、サイト公開後はアクセス解析ツールを活用して、サイトの効果を検証し改善につなげていくことも必要です。また、チラシは、自治体の保育園担当課と連携すれば、役所に置いていただくことが可能なケースもあります。

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園のスタッフの定着

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園において、運営の鍵となるのは優秀な保育士や教諭等のスタッフの存在です。優秀なスタッフの職場定着のためのポイントを説明します。

スタッフの求人募集の方法

優秀なスタッフの職場定着のために、まずしなければならないことは、魅力的な求人募集を出すことです。処遇改善加算などを利用して福利厚生を充実させ、人材開発助成金を活用して産休・育休制度の基盤を整えます。企業主導型保育園の場合は、産休・育休からの復職時に自分の子どもを入園させることが可能であると明記すれば、大きな売りとなります。以上のような処遇面の情報に加えて、良好な人間関係が築ける職場であることや、自己成長ができる職場であることを伝えられれば、さらに魅力的な求人募集となります。

スタッフ定着のポイント

優秀なスタッフを集めることができた後には、いかに職場に定着してもらえるかが重要となってきます。スタッフ定着のポイントの第一は、スタッフ間のコミュニケーションです。退職理由で上位に位置するのは、職場の人間関係です。スタッフ間のコミュニケーションの活性化を図り、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる雰囲気の職場にします。園長は相談しやすい上司であるよう努めましょう。第二は、スタッフのための物理的な環境整備です。園内に、園児から距離を置いてリラックスできるスペースがあると、緊張を解きほぐすことができて居心地が良くなります。第三は、経営方針や保育計画などを明確にすることです。日々、漠然と業務をこなしているのでは、スタッフは不安を覚えます。どの方向に向かっていくべきなのかの指針が明示されることにより、自信を持って働くことができるのです。第四は、スタッフの中長期的なキャリアアッププランの作成です。人材育成の目的が掲げられており、その達成のための研修などの自己成長の機会が設けられていることは、向上心のあるスタッフにとって大きなモチベーションとなります。

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園における業務効率化

経営を成功させるためには業務効率化が必要です。しかし、子どもを預かるという業種においては、効率化できる部分とできない部分があります。業務のどの部分が効率化可能なのか、そしてどのような方法で効率化できるのか説明します。

経営にかかる経費

園の経営にかかる経費には、人件費、水道光熱費、食材費、家賃、消耗品費、保険料、広告費、保険料などがあります。もちろん、水道光熱費や消耗品費の節減を進める必要はありますが、限界があります。そこで、節減できないように捉えがちな人件費と広告費について考えてみましょう。人件費の削減とはいっても、給与を引き下げたり、人員を減らしたりすると、保育の質を下げることになってしまいます。目指すべきは、業務を効率化してスタッフの負担を減らすとともに、残業代を減らすという方向です。スタッフの負担を減らすことができれば、定着率も高まり、新たな求人募集の機会も減ります。すると、広告費の削減につながります。

業務効率化対策

どのようにすれば、業務を効率化して経費を削減できるようになるのでしょうか。第一に、複数担任制の導入です。担任は指導方針の作成、工作や遠足の準備、園児の状況の把握、クラス日誌の作成、保護者への連絡など、様々な業務を負担しています。一人で担うのではなく業務を複数で分担すれば、スタッフの負担を軽減し、残業を減らせます。第二に、事務作業の効率化です。事務や書類作成を、それらの作業が得意なスタッフに集中させます。また、シフト作成やスタッフ間での子どもに関する情報の共有の必要性なども考慮すると、ICTシステムなどの導入も業務効率化には効果的です。

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園における経営上の課題とミッション

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園、それぞれの業態別に、経営上の課題を説明します。

保育園の経営上の課題

保育園は認可保育園と認可外保育園に分けられます。それぞれについて経営上の課題を見ていきましょう。

認可保育園

認可保育園の経営上の課題は、保育士の労働環境の改善です。残業が多いだけでなく、自宅に持ち帰って仕事をするケースも多々あります。労働環境を改善するためには、国による保育士処遇改善等加算やICTシステム導入支援を受けるとともに、園のキャリアアッププランの作成も重要です。

認可外保育園

認可外保育園の経営上の課題は、保育士不足です。それにともなう保育士の負担増により、保育の質の低下が懸念されます。魅力的な求人募集によって、優秀なスタッフを集めることが急務です。また、集金業務を行政ではなく園が行わなければならない点も、経営上のリスクとなっています。日頃からの保護者との手厚いコミュニケーションがあれば、比較的解決しやすい課題です。認可外保育園のうち、企業主導型保育園については別に述べます。

企業主導型保育園の経営上の課題

企業主導型保育園の経営上の課題は、良好な保育環境の確保です。企業主導型保育園は、しばしば企業内やオフィス街の一画に設置されるために、園庭がない等の保育環境の制約が生じます。そのような環境下であっても、積極的に園外の公園を利用する等の保育の質が低下しないような工夫が必要です。

こども園の経営上の課題

こども園の経営上の課題は、幼稚園と比較して、スタッフの手厚い人員配置が必要であることです。ですから、特に、幼稚園から認定こども園へ移行する場合は、園児の確保が重要課題となります。年齢別の募集対策を行い、きめ細やかに園児募集を進めることが必須です。

幼稚園の経営上の課題

幼稚園の経営上の課題は、幼稚園無償化の中で認定こども園への入園が加速しているということです。この事態を乗り越えるためには、幼稚園ならではの差別化が必要です。この園でなければできないことがあると、保護者に認識してもらえなければ生き残っていけません。

経営上の課題を乗り越えて法人のミッション実現へ

様々な経営上の課題を乗り越えた先にあるべきものは、園を運営している法人のミッション実現です。保育園は福祉施設として、幼稚園は教育施設として、またこども園はその両方の機能を併せ持った施設としての、本来あるべき姿が法人のミッションです。子どもを第一に考えるという基本理念に立ち返り、ミッション実現を目指していく道こそが、経営成功の道に他なりません。

まとめ

保育園・企業主導型保育園・こども園・幼稚園の経営を成功させるためには、まず、効果的な園児募集が必要です。次に、魅力的な求人募集を出し、優秀なスタッフに定着してもらいます。また、経営を成功させるためには業務効率化が必要です。スタッフの負担を減らすとともに、残業代を減らせれば、広告費の削減にもつながります。子どもを第一に考えるという基本理念に立ち返り、ミッション実現を目指していく道こそが、経営成功の道に他なりません。