産業廃棄物処理会社を譲渡・売却(M&A)。産廃会社をたたむより売却の方がメリットが多い理由とは。

事業ごみの処理を主に取り扱う産業廃棄物業界ですが、廃棄物処理法で規定された「20種類の廃棄物の処理」および「毒性や爆発性、感染性のある廃棄物」を処理しています。
担当業務は企業によって分かれており「収集運搬業」「中間処理業」「最終処分業」として大きく3つのカテゴリーの業種があります。M&Aにおいても対象企業がこの3種の、どの分野にあたるのかをしっかり判断する必要があります。産業廃棄物業界には不法投棄に関するマニフェスト制度があったり近隣住民とのトラブルがあるなど業界特有の問題点があることも考慮していかなければなりません。今回は業界の全体像と業界におけるM&Aの有効性を紐解いていきたいと思います。

産業廃棄物処理会社の市場環境と現状

産業廃棄物業は従来の産業ごみ処理業から、再生可能エネルギーやリサイクルという概念のもと事業の多角化が進められています。これを静脈産業といいます。近年では国を中心に大手企業もごみを再生可能なエネルギーに変えるという事業に注目しており産業廃棄物業界が活性化されています。
 

産業廃棄物処理会社の市場規模

産業廃棄物業界だけでの市場規模は約5.3兆円と推測されており、ここにリサイクル業や一般廃棄物処理業、再生資源産業までを含めると12兆円を超える規模とされており、この市場規模は全国のコンビニの規模11兆円やスーパー全体規模の13兆円と引けを取らないい市場の大きさがあるため、市場の可能性に大手企業が注目しています。
産業廃棄物処理業の許可を持っている事業者は11万者と多い反面、実際に稼働している事業者数は6.4万者と全体の60%ほどとなる。さらに産業廃棄物処理業を売上高の50%以上の主業としている事業者は1.2万者とされており、全体の10%程度にとどまるのが現状となります。そしてさらに通常認可よりも厳しい審査を通過した業者だけに認められる「優良認定業者」は1千者とされており全体の1%ほどまで絞られます。

 

産業廃棄物処理会社の市場動向

日本の産業廃棄物は年々増え続けており、2009年のリーマンショックで景気が急降下し、それに伴い廃棄物も減少傾向にあったものの、その後やく10年で増加傾向にあり今後も横ばいか増加が続くであろうと言われています。同様に処理業者の数も増え続けておりましたが2009年がピークとなり、以降は集約傾向にあります。事業者規模としては格差が進んでおり、大規模な処分場を複数保有し「収集運搬業」「中間処理業」「最終処分業」までを一本化している「大手企業」と収集業務のみを行っている所属が数人程度の「零細企業」まで多岐にわたります。
産業廃棄物は世界的にも問題視され深刻なことから、処理設備や処理技術の開発には大手を中心に進められております。現在では廃棄処理業務だけではなく処理に関する日本の技術が注目されており、設備や技術の輸出を目的としたM&Aも積極的に行われているのが現状です。

 

産業廃棄物処理会社のこれから

産業廃棄物処理での一番の問題とされている公害問題。日本では厳しい公害防止対策が実施され新技術の革新も追い風もあり、昔は町はずれの工業地帯にしか建設されることがなかったごみ処理施設が現代では都市のど真ん中にごみ処理場を稼働させています。都市型処理場の特徴であったダイオキシンの発生にもダイオキシンの生成を抑える「排ガス冷却」やダイオキシンを吸着除去させる活性炭の活用など様々な新技術の開発で1997年の排出量に比べ約99%の削減に成功し、都市の真ん中でもごみ処理場を建設できるようになりました。
これからはこの日本の技術に海外が注目しており、中国やタイ・シンガポールなどアジア各国で日本のごみ処理技術を導入し、公衆衛生の向上だけではなく環境保全の部分にも大きく貢献しています。
 
<h2>産業廃棄物処理会社 M&Aの特徴と目的

産業廃棄物処理業界関連のM&Aは大きく3つの特徴があります。「大手中心の集約型M&A」「新技術目的のM&A」「認可制による新規参入の壁」
この特徴について深堀していきましょう。

 

大手中心の集約型M&A

環境省によるデータでは、今後も産業廃棄物は増え続け、産業廃棄物業界や環境関係業界の市場規模は拡大の傾向にあるといわれています。しかし一方で技術の進化や環境保全の配慮から産業廃棄物処理場の数は減少していくといわれており、大手企業は産業廃棄物処理場等の施設を確保するため大手の傘下にはいる集約型M&Aが多いのが現状です。
 

新たな技術を目的とした売買

アジア諸国への技術輸出に成功し、これから海外に技術を売り込む動きが活発になっています。新技術をもつ中小企業には大手企業はもちろん海外企業からも注目が集まっています。厳しい日本の中で揉まれ、誕生する新しいごみ処理の新技術は環境保全はもちろん、国の公衆衛生レベルを引き上げる影響力がある為、これからのM&Aはこういった技術売買が注目されています。
 

許認可制による新規参入の壁

産業廃棄物処理業者は地域によって厳し許認可制度があります。地域に新規参入の業者は必要ないと判断されるといつまでも許可申請は通りません。こういった環境関連の業界は年々注目度があがり、他業種でも豊富な資金力がある企業は積極的に新規参入を狙っています。そんなときにM&Aで企業を買収することで許認可をクリアするM&Aも行われているのが現状です。

産業廃棄物処理会社  M&Aのメリット

産業廃棄物処理業界のM&Aは互いに様々なメリットがあります。各側面でのメリットを解説していきます。
 

売り手のメリット

売り手側のメリットは大きく分けて2つのメリットがあります。「人のメリット」と「お金のメリット」です。どういったことなのか解説していきます。

人のメリット

企業を運営していくうえで大切なのは「人材」です。特に産業廃棄物処理業界のような業界は専門知識がや専門技能を持っている人材が少なく買い手側からも人材をそのまま引き継いでもらえることが多いので、従業員の雇用を守ることができ人材資産を守っていくことができます。経営者側の視点では、やはり「後継者」という部分が多い場合もあります。中小企業の後継者不足はかなり根深く大きな課題となっています。M&Aでは売却や譲渡によりそのまま会社を引き継いでもらうことが可能なので後継者を確保しやすいのも大きなメリットといえるでしょう。

お金のメリット

産業廃棄物処理業が倒産や廃業する場合、事業の内容によっては多額の費用が必要になる場合も多く簡単に閉鎖することができません。一方M&Aでの売却や譲渡であればもちろん清算費用は発生せず、更には売却や譲渡益が得られる場合もありますので、その資金をリタイア費用や新事業の資金にできることも大きなメリットとなるでしょう。
技術開発という部分では、大手企業の巨大資本の傘下に入ることができれば豊富な資金で開発費用を得られたり大手の技術力を活用することができるので更なる飛躍も期待できます。
 

買い手のメリット

買い手のメリットも同様に「人のメリット」「お金のメリット」があります。買い手にはさらに「会社のメリット」も追加されていますので見てみましょう。

人のメリット

買い手側の「人」の一番のメリットはやはり技術者の確保です。経験者や技術取得者は1から教育する必要がなく、多くの経験を持っている人材なのでとても重宝されます。人材不足が問題視されている中での「人材確保」は事業拡大の大きなカギを握っています。

お金のメリット

一番はコストの大幅な削減です。教育コストの削減はもちろんのこと、事業拡大コストも抑えることが可能です。産業廃棄物処理業界で事業拡大をするには施設の建設や土地の確保など多額の資金が必要になりますがM&Aにより事業を取得することが出来れば、大きなコスト削減につながります。

会社のメリット

事業M&Aの一番の目的は「事業拡大」にあります。産業廃棄物業界も同様に着実にそして迅速に事業を拡大していくには、一から始めるとお金や労力がかかりすぎリスクも高いため、大手企業はM&Aを積極的に取り組んでいます。歴史ある会社や地域に強い企業を買収することができるだけで、顧客や関係者コネクションの強化、ノウハウの取得など会社にとってプラスになることが多いのです。
 

産業廃棄物処理会社 M&A事例

 

環境リサイクル強化の為の参入事例

2016年、鉄のスクラップ販売の老舗企業の「共栄」が、愛知に本社をおく環境リサイク
ル企業の誠美社工業を株式譲渡により子会社化しました。このM&Aで共栄は、総合的な環境リサイクル業が可能になり連携強化による大きな効果を生み出しています。