保険代理店のM&Aとは。生保・損保の代理店を売却するときに押さえたいポイントを紹介!

「所有している保険代理店を売却して、ビジネスを引退したい」「売却したお金で新しいことを始めたい」この記事はそんな方へ向けて記載しております。皆様、こんにちは。突然ですが、下記のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

  • 高齢となり今後が不安だが、後継者がいない。
  • 健康に不安がある。引退してのんびりと暮らしたい。
  • 会社は絶好調。でも何か新しいことに挑戦したいという思いがある。
  • 従業員のためにも会社の安定成長のため、資金と組織力のある大手企業の傘下に入りたい。
  • 事業の選択と集中を進めるため、保険代理店を売却したい。
  • ネット販売が主流となった今、代理店としての未来が不安。

上記の悩みはM&Aで解決することができるかもしれません。保険代理店を取り巻く現状とM&Aに関して、ポイントを確認していきましょう。

保険代理店業界におけるM&Aの状況

保険契約代理店の現状

近年、保険代理店業界は、少子高齢化、景気低迷といった世の中の変化に加え、オンライン販売等の拡大や投資信託等の保険以外の金融商品の拡充の影響に晒され、競争激化が顕著になっています。その結果、手数料収入が激減し、中小保険代理店だけでなく大手保険代理店ですらも、経営環境は厳しくなってきています。このような環境の下、規模の拡大によるスケールメリットの獲得を目的としたM&Aだけでなく、個人においても、代理店を好条件で手放し、第2の人生を悠々自適に暮らそうというニーズが増えています。また、定年・引退の年齢を迎えた経営者が、後継者問題・事業承継問題を解決するためのM&Aも増加傾向にあります。

保険代理店の減少とM&Aの関係

保険代理店の現状を調べてみると、ここ数年間、店舗の数は減少傾向にあります。生命保険分野では、法人の店舗数が過去5年(2015年から2019年)で35199店から33948店に減少しています。個人の店舗は同期間、毎年およそ2,000店ずつ激減しています。(5年で57,786店から49,631店に減少)
※生命保険協会「生命保険の動向2020年版」より抜粋
https://www.seiho.or.jp/data/statistics/trend/pdf/all_2020.pdf
一方、損害保険分野においても、店舗の数が2019年度末で172,191店 であり、前年度末の 180,319店 に比べ8,128店減少しています。
※日本損害保険協会「2020年8月31日 プレス資料」より抜粋
https://www.atpress.ne.jp/releases/222952/att_222952_1.pdf
インターネット型店舗や、多種多様な金融商品を揃えた来店型の保険ショップを利用する人が増えている一方で、従来の保険代理店の数は減少しています。少子高齢化による市場規模の縮小や、店舗不要のオンライン型の保険契約の隆盛により、保険代理店にとって利益を得にくい逆境となっているのです。それに加えて、保険業法の改定により、保険代理店は契約を依頼する保険募集人を新たに雇えなくなりました。そのため、店舗での営業は従業員のみで取り組まなければならないため、新規の契約を取る機会も減少しました。また、経営者の高齢化が進み、後継者不足に悩まされる店舗も見受けられます。このような現状から、大手の保険代理店への売却や事業譲渡を検討するといった、M&Aを選ぶ経営者が増加しているのです。

保険代理店M&Aのメリットとは

 
ここでは、廃業と比べて、保険代理店をM&Aで売却する際の良い点を説明します。主に下記の3つになります。

  1. M&Aで得られる売却利益
  2. 従業員の雇用維持
  3. 承継問題の解消

それでは1つずつ見ていきましょう。

M&Aで得られる売却利益

1つ目に挙げるメリットは、M&Aによる売却利益です。M&Aで株式譲渡を選択すると、売却益はオーナーである代理店の経営者の元に入ります。オーナーが売却する株式の大半を所有していれば纏まった資金を得られ、引退後の第2の生活に補填したり、新しい事業を始める軍資金を賄えることができます。

従業員の雇用維持

2つ目の売却メリットは、従業員の雇用を保障できる点です。保険代理店を廃業した場合、これまで会社に貢献してくれた従業員から職を奪うことになります。前述の通り、保険代理店の数は減少傾向にあるため、従業員の次の就職先が決まらない!という事態も想定されます。そこで、廃業ではなくM&Aによる代理店売却を選択すれば、買収する企業に従業員の雇用契約を引き継いでもらえる可能性が高いです。加えて、大手の企業に譲渡する場合、従業員の労働環境の改善・賃金アップも見込めます。つまり、従業員の将来のためにも、M&Aによる売却は理にかなっているのです。

承継問題の解消

3つ目に取り上げる売却のメリットは、承継問題を解消できることです。M&Aを選択することで、親族や社内に経営を任せうる適任者が見つからなくとも、社外の第三者から後継者を任命することができ、保険代理店の事業を存続させることができます。また、廃業選択時に生じる顧客への引き継ぎ先の説明や、廃業に伴う登記・法手続き等の事務手続きが、M&Aを選択することにより不要となります。現状をそのままの形で譲渡するので、士業への支払い、借入金の返済、および店舗の原状回復費などの費用も不要となるのです。

保険代理店M&Aの様々な手段を紹介

保険代理店のM&Aでは、主に2つの手段が用いられます。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。

  1. 株式譲渡
  2. 商権譲渡

株式譲渡:会社を丸ごと売却する方法

保険代理店M&Aの株式譲渡とは、買い手企業が売り手企業の株を取得し、経営権を引き継ぐ方法です。多くのM&Aで、売り手が所有するすべての株式を買い手に譲り渡します。売り手には、大手企業や同業者に自社の株式を売却することで、「既存の保険契約の保持、従業員の雇用維持、および後継者問題の解決により廃業を避けることができる」等の利点があります。また、中小の保険代理店ではオーナーが株主として代理店の経営に携わっていることが多く、そのため株式譲渡によるM&Aが選ばれることが多くなっています。株式譲渡のメリットは、簡易な手続きで売買を終えられる点です。株式の売買契約を交わして、対価が支払われることで、容易に取引は完了します。さらに、株式の売却益は代理店オーナーの手元に入り、かつそれに対して支払う税金も20%と低いため、利益の面でメリットが大きいです。

商権譲渡:保険代理店式の事業譲渡

保険代理店のM&Aには、もう1つ、事業譲渡の一種:商権譲渡という手法があります。ここで売買の対象となるのは「営業権」です。通常の事業の譲渡とは異なり、保険代理店の業務の営業権のみを譲ります。商権譲渡は副業式の保険代理店に多く見受けられます。その理由は保険代理店業務を他社に任せることができるためです。本業に専念したい、後継者が見つからない等の多岐に渡る悩みを抱えている企業が、商権譲渡の手法を選択するのです。商権譲渡のメリットは、株式譲渡程ではありませんが、対価を得られる点です。商権を譲り渡すことで纏まった資金を入手でき、今後の主力事業の拡大を図ることが可能になるのです。もう1つの利点は、手数料収入の獲得です。一般的には契約上、売却側と買収側とで1つの保険契約を管理するため、一定の収入が確保できるのです。

M&Aで事業売却を成功させる重要なポイント

M&Aで事業売却する際のポイントを紹介します。5W3H(how,how much,how many)の観点の中から以下の4つが重要になります。

  1. いつ売却するのか(when)
  2. 誰に売却するのか(who)
  3. いくらで売却するのか(how much)
  4. 誰に相談するのか(who)

順番に確認していきましょう。

いつ売却するか

これまで育ててきた、思い入れのある会社を譲渡するという決断は決して簡単なものではありません。いつかはと思いながら、決断を先延ばしにしているうちに、ズルズルとタイミングを逸してしまうこともあるでしょう。確かに現状のコロナ禍においては、設備投資や企業買収に慎重な企業も多く、経済が好転したタイミングの方が、売却価格は高くなるかもしれません。また、業績が好調であればある程、良い条件で契約できる可能性があります。そのため、「今は景気が良くないからもう少し待ってから。」、「今後景気が上向き業績はさらに良くなるのでは?」と決断を先延ばしにしてしまう気持ちも理解できます。しかし、将来のことは誰にも分かりません。会社売却の最適な時期は、他に挑戦したいことが出てきた時、または経営意欲よりも第2の人生を歩みたいという意欲を感じた時」です。企業経営には、モチベーションと体力が必要です。加齢、健康、第2の人生設計、等々どのような理由にせよ、経営意欲が低下すればやがて業績は悪化するでしょう。その前に、熱意と能力のある会社・経営者に経営をバトンタッチすることが、自分自身、会社、従業員、取引先、全ての関係者にとって最良の結果をもたらすのではないでしょうか。

誰に売却するか

会社、従業員、取引先等の全てのステークホルダー(利害関係者)にとって理想のM&Aを達成するためには、売却・譲渡する相手先が重要です。経営者個人だけでなく従業員、取引先、銀行にとっても、どのような価値観の企業が買い手となるのか、買収後はどのような経営方針となるのか、また買い手企業との相乗効果がどの程度あるのかは非常に重要です。良い相手先と巡り会うためには、最初から選択肢を狭めすぎず、可能な限り多くの要望を満たす買い手候補企業と、話をする機会をもつことがよいでしょう。うちの代理店は異業種の方ではうまく経営できないので、相手は同業者でないとダメだ」、また逆に「同業の傘下に入るぐらいなら、買収相手は異業種がよい」と感情論をベースに仰る方もいらっしゃいます。しかし、様々な会社とM&Aの協議を進めていく中で、当初予期していなかったような意外な会社が候補に挙がることもあります。その会社が、これまでの企業文化や従業員の待遇を尊重してくれて、さらには、ビジネス上の相乗効果まで生み出せるような最良な買収相手となることがあるのです。結果として、これが従業員や取引先のためだけでなく、創業者利益を最大にするための有効な手段となるのです。

いくらで売却するか

従業員や取引先にとって満足のいくM&Aであれば、売却価格には拘りはない、という方もいらっしゃるかと存じます。その場合は、相場に一致した価格で売却できさえすれば問題は無いかもしれません。しかし一般的には、可能な限り高い金額にて譲渡したいとと考えるのが自然です。その場合においても、買い手となる企業に提示する希望売却価格は、高ければ良いという訳ではありません。希望額が高すぎると、買収に興味を示す買い手企業が少なくなるからです。希望売却価格は、売り手側には満足できる程度に高く、かつ、買い手企業が興味をもってくれる程度には妥当な金額、つまりは「絶妙の水準」に設定する必要があります。企業規模、業績、財務内容、買い手の買収意欲、管理体制を包括的に検討すると共に、M&Aの専門的な知識・経験をもつM&A専門会社やコンサルティング会社のアドバイスも参考に最終決定するのがよいでしょう。

誰に相談するのか

前述の「誰に売却するのか(who)」、「いくらで売却するのか(how much)」を、自分だけで判断し実行するには難しいため、一般的にはM&A専門家の助言と支援が必要になります。M&A、仲介・助言を依頼する先としては、独立系のM&A専門会社、大手金融機関(銀行、証券大手)、会計事務所、コンサルティング会社等が考えられます。M&A専門会社、大手金融機関によって、「強み」、「取り扱う案件の規模」、「報酬体系」、「買収候補企業へのアプローチ方法/戦略」は千差万別です。自身との相性が良いこと(直接会話することにより「信頼できる!」と感じることができる)、契約書の作成手続面の支援だけでなく、トータル的にサポートできる専門家であること、および会社のニーズにあった専門会社であること、等の判断基準により、ご自身の納得できる専門会社を選択いただければと思います。

M&Aで事業売却する際、出来るだけ高く売却するコツ

会社を売却するのであれば、できるだけ高い価格で売却したいと考えるのが自然です。ここでは、M&Aで会社の売却額を上げるための3つの条件を伝授します。

  1. 事業の利益が出ている
  2. 独自の強みを持っている
  3. 健全な法務・財務状況である

1つずつ自社と照らし合わせて考えてみてください。

事業の利益が出ている

売却を予定している代理店は、利益が出ているでしょうか。利益が安定して出ていれば、高値で売却できる可能性が高くなります。せっかく買収したのに利益が出なければ、M&Aによって得られる効果が薄く、買い手にとってメリットがないからです。従って、買い手は利益が出ているのか/収益性は安定しているのかという点に注目する傾向にあります。もちろん、すぐに収益性を向上させることは難しいかもしれません。そのようなときには具体的に現状何が問題点で、どのように改善すれば改善可能か、事前に整理しておきましょう。

独自の強みを持っている

独自の強みがあるという代理店も、高値で売却しやすいです。保険販売業界の市場では、高いシェア率を獲得するために多種多様な試みが行われています。コロナ禍の買い控えの状況の中で生き抜いていくには、自社にしかない独自の強みがあると無いのでは、大きな差異が出てきます。例えば、その代理店がある地域に高齢者層が多く、その層の保険契約に高いシェアがあるのであれば、それは大きい強みであるといえます。買い手にとっても今後ビジネスを展開する上で非常に有益なベースとなるからです。このように自社の独自の強みはどこにあるのか、何を強みといえるのかを客観的に把握して伝えられるようにしておきましょう。

健全な法務・財務状況である

最後に説明する売却額に大きく影響するポイントが、法務・財務などの「会社の健全性」です。具体的には、以下のような問題を抱えていないかチェックしてみて下さい。

  • 訴訟問題に発展している事例がないか
  • 取引先との契約が順守されているか(契約不履行がないか)
  • 会計処理が適正に行わているか
  • 簿外債務を持っていないか

このようなリスクを抱えていては、買収価格を高く維持することは難しくなります。場合によっては、買い手はリスクを引き継ぐ条件として買収価格の減額を打診してくるでしょう。さらに、後から発覚した場合、取引自体が無くなることもあり得えますし、最悪の場合、訴訟問題に発展するリスクもあります。法務・財務状況に問題があるなら、今すぐにでも整理しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?本記事を通じて、M&Aに関する理解が深まるとともに、企業をスムーズに売却し、第2の人生をスタートされる際のお役に立てれば幸いです。保険代理店は皆様にとって、子供のようなもの、または宝物のようなものだと思います。その子供がたくましく巣立っていけるよう、また、宝物が今後さらに輝きを増すように、本記事で述べた
「保険代理店のM&Aのメリット」
「事業売却時の重要なポイント」
「高く売却するコツ」
を正しく理解し、実践いただければと存じます。