人材紹介会社を売却(M&A)する前に準備すべきことは?人材紹介業を売りたいと思ったら!

AIやRPA、chatbotなど業務効率化に向けてシステム開発や導入が進む昨今、新型コロナウイルスの影響もあり業務効率化の流れはさらに加速しています。そしてさまざまな業界で必要となる人材が変わり、人材紹介業界はその影響を受けています。その中で、人材紹介会社を売却して事業転換をしようと検討している経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで今回は、人材紹介会社の事業売却を検討している方に向けて「人材紹介を売却する前に準備すべきこと」というテーマでお伝えします。

人材紹介会社とは〜多様化する人財ビジネスの現状

人材紹介会社とは、企業の求人と求職者の申し込みを受けて、それぞれの間に入り雇用のマッチングを行う有料職業紹介事業者のことです。人材紹介会社は、雇用を成立させることで紹介手数料を受け取っています。業態としては下記のように、求人広告の代理店や人材紹介業から、HRテック関連の事業や採用コンサルティング業まで幅広くあります。

  • 人材紹介会社
  • 採用コンサルティング会社
  • 求人広告代理店
  • 求人メディア業
  • 採用関連サービス運営

人材業界の一般的なイメージでは、人材紹介業や求人広告代理店が多いですね。

人材紹介会社の市場規模

人材紹介業界は、非常に景気の影響を受けやすい業界です。
矢野経済研究所の調査によると人材紹介業の市場は、ここ数年、高い成長率で伸長してきました。しかし2020年度後半以降、コロナ禍で景気の先行き不透明感が広がり人材採用を控える企業が増えてきていてマクロ的な観点からは人材紹介市場の拡大に陰りが見えてきている状態といえます。一方で、経済の不確実性が高い状況では、主婦層などの非正規雇用の活用が促進されたり、終身雇用制度の維持が難しくなり、中高年の転職支援の市場が活発化するなどプラスの要因も考えられます。さらにはIT企業などを中心にグローバル人材の獲得競争が活発になっており、今後も大きな動きが予想されるのが人材紹介業界です。

人材紹介会社も、これからの多様化する雇用の流動化に適応していくことが求められています。このように変化の激しい人材紹介会社の事業売却においては、他の業界と同様で買い手目線で考え準備を行うことが大切です。ここでは、買い手目線で見るポイントについて解説します。

人材紹介会社を高値売却(M&A)するための5つのポイント

人材紹介業界は、景気の影響を受けやすい業界です。特に、2020年から始まる新型コロナウイルスの影響で、多くの企業で採用を手控えたり派遣社員を削減するなど人材紹介業界にとっても逆風があります。経済の不確実性が高い現在では、非正規雇用の需要も高まり主婦や中高年層の活用も進むでしょう。また、終身雇用も難しい中では求職者のキャリア形成を含めた転職支援の動きも活発になることが考えられます。さらに、野村総合研究所がオックスフォード大学との共同研究論文にて発表した内容では、AIやRPAを活用した単純作業やデータ処理の自動化により、2020年代で日本にある仕事の49%がAIによって代替されるとしています。グローバル人材の活用も活発になっていることもあり、今後も大きな動きが考えられるのが人材紹介業界です。人材紹介会社も、これからの多様化する流れに適応していくことが求められています。

このように変化の激しい人材紹介会社の事業売却においては、他の業界と同様で買い手目線で考え準備を行うことが大切です。ここでは、買い手目線で見るポイントについて解説します。

規模について(大手 or 中小)自社の強みの仕組み化

大手もしくは中小、その規模感は重要なポイントです。なぜなら、中小規模のエージェントや採用コンサルティング会社、いわゆる特定の人を軸に成り立っている会社は比較的事業の売却が難しいと言えるからです。というのも、小規模の属人的なビジネスは、その人材がいなくなれば業績が大きく悪化することが考えられるため、ビジネスの継続発展性に懸念があり評価が低くなります。そのため買い手が一定期間、事業に対してテコ入れを行わずとも業績が下がりにくい仕組みを整えられている状態が、事業としての価値が高いのです。つまり事業が仕組み化されていて、将来生み出すことが期待されるキャッシュフローが高いことが重要ということですね。

採用実績は最大のアピールポイント

人材紹介業界は、大手から中小規模の会社まで多くの競合がひしめく業界です。そのため、採用実績が本当にその企業に力があるかどうかを判断する重要な指標です。ただし、取り扱い案件数や規模による集客力に劣る中小規模の人材紹介会社は、扱う業界や職種を限定し専門性を高めて高確率の転職実績を作っている場合もあります。そのように、専門性を高めたノウハウ構築を行い、高い採用確率を作り出すこともポイントとなります。

取り扱う求人案件の業界について(ニーズに高い求人の専門性)

買い手側が人材紹介会社を経営している場合、既存の事業との親和性を確認するため、売り手側の人材紹介会社が扱う求人案件の業界や職種についてがポイントになります。採用活動が活発な業界や、求職者が集まりやすい業界や職種を扱っていれば、そのこともポイントになるでしょう。

キャリアコンサルティングの質(求められるコンサルティングの質)

キャリアコンサルティングに対するニーズは高まっており、事業売却時にもその質がポイントになります。というのも、日本全体として終身雇用の時代は終わりを迎えており、長期的なキャリアに悩まれている求職者が増加しているからです。そのような中で、総合力が高く多数の求職者を対応する大手人材紹介会社は、どうしても一人一人に避ける時間が減ってしまいます。キャリアコンサルティングに力を入れて、求人企業と求職者双方から評価が高く口コミも良い状態であるのが望ましいですね。

集客への取り組み(高まるHRテックへの取り組み)

どの業界においても言えることですが、集客への取り組みとその効果状況は非常に大切なポイントです。特に、紹介案件だけで成り立つような形ではなく、Webを活用し仕組み化された集客モデルが構築されていれば高い評価となるでしょう。具体的には、集客用のサイト構築や特別に作成されたLP(ランディングページ)、SNSを活用した集客などがあります。ホームページのSEO対策なども同様で、資産となるような仕組みが高評価になるポイントです。

人材紹介会社の売却を成功させるために必要な3つの条件

人材紹介会社を売却する時の、買い手目線で見るチェックポイントについてお伝えしてきました。それらのポイントを押さえた上で、具体的に売却に向けてどのような点に注意して準備をすれば良いのかを解説していきます。

集客の仕組み化

まず準備しておきたいのが、集客の仕組み化です。特に中小規模の人材紹介会社は属人的な部分も多く、ほとんどの集客が紹介によるものというケースがあります。しかし、それではその人材がいなくなってしまうと集客力は半減してしまいます。そのリスクは買い手側が抱えることになり、事業売却時には争点にもなり得ます。そのため高い採用実績を作りながら、その実績を軸にSEO対策を講じたサイト構築、評価の高いSNSアカウントの育成、その他求人サイトでの口コミ対策などを行いましょう。経営者や一部の人材がいない状態でも集客に影響が少なくなるよう仕組みを作っておくことが重要です。

求人企業からの評判対策

求人企業からの評判対策として、ミスマッチが起こりそうな求職者は、マッチしそうな別の人材紹介会社に紹介するということも検討していきましょう。なぜなら「○○からの紹介は良い人材が多い」という高い満足度の評判を得ることで、求職者の書類選考通過率や面接通過率も高くなることがあります。そのことが高い採用実績につながり事業の売却時にもポイントにもなるからです。評判を高めるためには下記のポイントを押さえて改善を図りましょう。

  • 扱う業界を限定し専門性を高めマッチング率のアップ
  • 求職者の応募書類の添削や面接対策の強化
  • ヒアリングを重視したキャリアコンサルティングを実施

求職者を就職までしっかりとフォローできるよう、信頼関係作りや誓約書での対応も検討が必要ですね。

従業員の雇用継続

人材紹介会社は中小規模であるほど、属人的な部分が大きいです。そのため、事業の売却に伴い人材も流出してしまうと、事業の継続が難しくなります。そのことを回避するためにも、能力の高い従業員が経営者が変わっても辞めないように、事前の調査と意向の確認を進めましょう。そして、継続して働いてもらえるようヒアリングしながら条件交渉などの段取りを組みましょう。買い手側が大手であれば、事業の売却により待遇や給与もアップできる可能性があります。そのことも事前に確認を行いながら秘密裏に進める必要がありますね。

まとめ

以上、いかがだったでしょうか?人材紹介会社の売却には、集客における仕組み化から、実績含めた評判対策、事業売却後にも従業員に継続して働いてもらうための取り組みまで、非常にセンシティブな点もあります。事業の売却を高額かつスムーズに進められるよう、今から準備を進めていきましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。