お好み焼き屋を売却するなら、居抜きか、M&Aか。

この不況の中でも飲食業界のM&Aは盛況な状況にあります。「新しく飲食店を立ち上げる」よりも「少ないコストですむM&A」は今だからこそ注目されています。小規模での運営を続けるリスクの高いこれからを見据え、「経営されているビジネスの引退」や「売却した資金で新たなチャレンジ」をする経営者が増えてきています。今回は実際に売却・譲渡された事例を踏まえ、相場より高く買い手がつくポイントを紹介します。

お好み焼屋の「M&A」と「居抜き売却」の違い

ご自身の飲食店舗を手放そうと検討されている場合、「M&A」か「居抜き売却」という選択肢があります。ここでは「M&A」か「居抜き売却」の違いを簡単にわかりやすく解説します。M&Aの知識やメリットを理解することで検討の選択肢を増やしましょう。

お好み焼き屋を一から開業する場合、専用鉄板の設備投資や排気環境を整えるなど初期費用が一般の飲食店に比べ店舗関連費(物件取得、内装工事費、設備費)が高いといわれています。買い手側の心理としてはM&Aによって初期費用をなるべく抑えられることやお好み焼き屋特有の少ない原価での高い利益率での運営が期待されるため飲食店M&Aのジャンルの中でも人気の業種となります。

M&A「株式譲渡(会社譲渡)」

株式譲渡(会社譲渡)とは「会社の経営権を譲渡する」ことです。賃貸・雇用契約はもちろん経営権や営業権などの権利も譲渡されるので、債務などの負債も譲渡範囲に入ります。
ただしこの場合、会社をまるごと譲渡する内容となるので「一部の店舗だけを売却したい」「レストラン事業だけを売却したい」といったことはできません。

メリット:負債も含めた譲渡が可能
デメリット:譲渡の細分化が不可能

M&A「事業譲渡」

事業譲渡とは「会社の中の一部の事業(店舗)を譲渡する」ことです。上記の株式譲渡ではできなかった譲渡対象の細分化が可能で売りたい部分だけを売却出来るのが大きなメリットです。しかしこの場合、当事者同士で譲渡範囲を決めるので折り合いがつくまでに交渉時間を要します。また、部分売りとなるため「負債」はそのまま手元に残ってしまう可能性も。

メリット:譲渡範囲を細分化でき部分売却が可能
デメリット:交渉に時間がかかる負債が残る場合がある

居抜き売却

居抜き売却とM&Aと違い「物件のみを譲渡する」ことです。会社を買うという株式譲渡や飲食事業を買う事業譲渡とは違い、純粋に店舗のみを売却することを意味します。店舗の閉店時に発生する様々な費用を抑えられ、売却益を最大化出来ることが大きなメリットで、長年多くの経営者から選ばれてきました。お好み焼店は専用の鉄板テーブルなど専門的な設備が多く、買い手側もスケルトン新規開業のコストに比べてローコストで買取ができるメリットを感じていることが多い業種でもあるので高額買取のチャンスも広がります。
しかし居抜き売却は「家主さんとの賃貸契約内容で居抜き売却ができない場合」や「リース契約が造作がある場合」等によって、買い手とのトラブルや売却自体が白紙になるケースも少なくありません。

メリット:閉店における余計な費用を抑え売却益を最大化出来る
デメリット:賃貸契約内容やリース品によっては居抜き売却ができずトラブルになることも

M&Aが選ばれ始めている大きな理由

飲食店の店舗売却は長年「居抜き売却」が選ばれてきましたが近年「M&A」に注目が寄せられておりM&Aを選ばれる経営者も増えてきています。その主な理由は相場にあります。店舗物件と内装設備自体に価格がつく「居抜き売却」とは違い、これらにブランド力や収益などの「事業としての価値」がプラスされます。物件だけではなく今までやってきた歴史を含めて査定してもらえるということなんです。経営先が変わることで現在は赤字でも立て直せる見込みがあったり収益が出る可能性がある店舗は高値で取引されることも少なくありません。

お好み焼屋売却・譲渡の価格相場とは

飲食店のM&A(売却・譲渡)をしたいと検討する場合、一番気になる部分が「どのくらいの相場で売却(譲渡)が出来るのか」ということです。
結論M&Aの相場は様々な要因が査定対象となるため一概には言えないというのが現状ですが、居抜き売却の実績ベースとしては、飲食店の売却相場は個人店で坪相場80万円?2万円と大きな差があります。この差は「立地」や「店舗状態」「設備」等で査定されます。
今回は「M&A」買い手の目線として、この「居抜き相場」にどのような要素がプラス査定されるのかを解説します。売却単価を上げるための参考にしてください。

価格決定における重要な要素4つ

書い手がM&Aでの価格決定をするにあたり重要な要素が4つあります。

売上

店舗の経営状況は「黒字」「赤字」でももちろん大きく価格が変わります。しかし、「赤字店舗」でも譲渡金額が安くなり節税効果が得られるメリットもある為、将来黒字に転換できる可能性があれば、赤字だからといって買い手がつかないわけではありません。
お好み焼き屋の運営の場合、粗利益率が高い粉物が「大きな武器」で流行り廃りの影響がない安定の業種となります。店舗が赤字の場合にも、大切なのは経営者が「赤字要因」をしっかりと理解し黒字化する為のロードマップ等を作成すれば買い手の印象がプラスに転じることもおおいにあります。

知名度

お好み焼きも「広島焼」「大阪風」「東京もんじゃ」などブランド商品が多く、そのジャンルによって様々なお店の形態があります。お店の形態にあわせたマーケティングが必要で、最近では店舗のブランド力を「店舗SNSのファンの数」や「インスタグラム関連数」、「口コミサイトでの評判」等での注目度で判断されることも多いです。目に見える形での「知名度」は買い手の査定を大きくあげることが可能です。ポイントカードや割引券などとSNSを紐付けて登録者数を増やす努力やインスタ映えを狙ったメニュー開発等も後々の査定に大きく響くこともありますので運用しておくのもありだと思います。

人材

人材は飲食店M&Aにおいてもっとも重要なポイントとなります。パートやアルバイトの在籍が十分にあれば、譲渡後に採用活動を行っても「人が集まりやすいお店」という印象を買い手の持ってもらうことができます。お好み焼き屋での人材はやはり「焼ける従業員」が重要となってきます。最近では「マヨネーズで絵をかけるスタッフ」や「会社で焼き手ランキングを付けスタッフをブランド化」のような従業員自体に付加価値を付けている会社も増えてきました。このような従業員が在籍している会社は買い手からとても評価が高く価値を上げる要因になりますのでスタッフ教育は重視しましょう!
逆に高い離職率や人材が不足してシフト調整に苦労している場合などは印象をかなり下げてしまう傾向にありますので、今からでもパートやアルバイトをしっかりとフォローし従業員満足度をあげることも必要です。

立地条件

駅前や繁華街など集客しやすい立地ほど高く評価される傾向にあります。お好み焼き店は住宅街から駅前まで様々な場所で出店が可能なフードジャンルになるため、買い手にとっても立地が良ければ業態を変えることや異業種等にシフトチェンジすることもローリスクでチャレンジできます。M&Aでの「立地」における重要点としては「立地や客層に合わせた店舗設計ができているか?」ということ。「学生街であれば食べ放題プランが豊富」や「高級繁華街であれば個室やコースが多い高級路線運営」など立地に合った運営によって買い手からの評価が上がります。大手飲食店などでも通行量調査など立地選択に多く時間をかけているくらい立地は重要な査定ポイントとなります。

店舗側の努力で変えられる査定を高くする要素

従業員の教育と見定め

人材教育という面では上記の説明にもあったとおり、「マヨネーズで絵をかけるスタッフ」や「会社で焼き手ランキングを付けスタッフをブランド化」のような従業員自体に付加価値を付けている会社が増えてきています。人気スタッフを作ることで従業員同士の士気が上がり活気ある店舗運営が出来ます。このような取り組みは買い手から高評価を受ける要因となります。

従業員の見定めという視点で見た場合、お好み焼店は「鉄板でお客様が調理する」というスタイルが多く、その場合専門的なスキルが必要ない為どうしても若い従業員がメインになります。「アルバイトと恋愛関係になっている若い店長がいる店舗」や「一部のアルバイトに仕事を任せすぎた結果、そのスキル(キーマン)に依存してしまっている店舗」は、買い手からあまりいい印象がありません。

今のうちに再度人間関係を調査し「人材の引き継ぎがスムーズに行われるか」「キーマンの対応をどうするか」その辺りの計画もしっかりしておくことで印象をあげる効果があります。

競合との相違性を明確にする

競合店舗との相違性は、お店のオリジナリティを判断する大切な要素です。「自社の豚玉は競合店と何が違うのか?」「競合店メニューとの類似メニューは?」「比較した時の自社の強み(例うちは鉄板焼きメニューが他より豊富)」などをあらかじめ自社と競合を調査してまとめておくとM&Aでの査定印象が上がることはもちろん、現状での経営改善につながることもあります。

これからの収益性を再度数字で予測する

買い手側にとってお店の状況をより知るために、健康診断シートや取扱説明書のような判断基準になるものを常に求めています。赤字店舗の場合「今は赤字だけど、ここを改善していけば黒字に転換できる」という予測を細かい数字で算出することで、買い手に将来性をアピールすることができます。粉物系の低原価率や運用改善を数字で買い手に伝えることが大切です。

飲食店M&Aの成功事例&失敗事例

成功事例

手作りケーキが人気の喫茶店のM&A

オーナー自身が運営する手作りケーキが有名な喫茶店では、リピーターが多く地元から愛されていましたが、後継者がおらずM&Aを検討することになりました。すると洋菓子店とのM&Aを成功させて来たA社から引き合いがあり、譲渡を検討することに。
オーナーはお話のままに譲渡するのではなく、買い手企業の特徴や経営状況等を入念にチェックし最終的にはA社に譲渡することを決めました。
しっかりと調べた結果として今ではA社は地域への事業展開と事業の拡大に成功しています。

老舗ラーメン屋のM&A

50年近くにわたり地元から愛されているラーメンチェーンがありました。オーナーには後継者がおりませんでしたが、その代わりに若い人材を3年ほど技術取得の修行をさせ、その間の賃金の一部を買収資金として最終的に店舗を買い取らせて独立を手助けする「スモールM&A」を実施しました。
結果としてオーナーは老後の資金を調達でき、買い取った若者も店舗と顧客をそのまま手にすることが出来ました。

失敗事例

地元で人気のカレー店

地元で人気があるカレー屋さんのオーナーが後継者不足の為、廃業もしくはM&Aを検討していたところ、大手飲食チェーン企業から事業承継のオファーが入りました。良い話だと即決して事業承継を行いましたが、回転率を重視しカレーを大量に作り効率化をUPさせる大手チェーンの方向性を重視した結果、味・サービスが落ち売上が伸びない状況が続きました。結果的に前オーナーがアドバイザーとして運営に入らなければ立て直せない状況にいたり、地元から愛されるカレー屋だった頃に戻ることはありませんでした。

お好み焼屋フランチャイズという選択肢

経営そのものを売却するM&Aとは違い、お好み焼き屋を開業するノウハウを販売するという「フランチャイズ」という選択肢も一つです。「素人でもお好み焼き屋を開業することが出来る」という付加価値を付けたノウハウを販売し、開業までを一からサポートすることで発生する対価を買ってもらう手法です。詳しくみていきましょう!

FC(フランチャイズ)とは

企業に対してロイヤリティーを支払う代わりに、経営に関するサポート受けられる制度を言います。完全な素人でも「お好み焼き屋」を開業できるよう一からサポートし、その対価としてロイヤリティーを請求します。現状店舗をお持ちの場合でも、オーナー自身が開業してきたノウハウを個人へ「店舗ごとFCコンサル(サポート)を行いながら売却」をするスモールM&Aも手法の一つで、お店の看板はそのままで「後継者」を立てる事が出来るフランチャイズ制度は一つの選択肢に入れてもいいのではないでしょうか。

ノウハウを販売する

フランチャイズで成功をすると、そのノウハウに付加価値が付き色々な企業から声がかかることも少なくありません。店舗単体を売却するのではなく、オーナーが培った歴史をノウハウとして継承することでお店の看板をずっと残すことが可能です。

お好み焼き屋を開業するには専門的な知識が必要になります。仕入れ業者や設備業者など手間がかかる様々な手続きをセットにすることで、「素人経営者でも簡単にお好み焼き屋を始められる」というパッケージさえ作れれば大きな対価が期待できます。

お好み焼屋売却・譲渡相談する理想の相手とは

まずはM&Aを経験された知人に話を聞く

まさに「百聞は一見にしかず」で、経験者からの話に勝るものはありません。インターネットは様々な情報で溢れていますが、信頼できるのはやはり経験者。お近くに経験者がいらっしゃれば是非一度お話を聞いてみてはいかがでしょうか?

専門家の話を聞くM&Aコンサルタント

近くに経験者がいない場合は、専門知識豊富なコンサルタントの話を聞いてみてもいいと思います。いわばコンサルタントも経験者の1人。知人とは違い信頼性や安心感は少し劣りますが、コンサルタントも成功させてなんぼの実力重視の世界なので、しっかりと話を聞いてくれると思います。