就労継続支援A型を会社売却(M&A)しようと思ったら!事業譲渡も可能、コツを紹介。

就労継続支援A型は利用者と雇用契約を結び、事業収益から賃金を払わなければなりません。そのため、経営を安定させるためには、稼げる収益事業を軌道に乗せることが何よりも重要です。生産性向上対策、そのための職員の役割、リスク管理、経営を支える助成金など、経営成功のポイントを解説します。

就労継続支援A型の生産性向上のポイント

就労継続支援A型の経営成功のためには、収益事業を軌道に乗せ、事業収益から利用者に賃金を支払うサイクルを円滑に回していくことが必要です。収益事業を軌道に乗せるために鍵となる、生産性向上のポイントについて解説します。

 

営業活動の重要性

事業で利益を上げるためには、まず、仕事を作らなければなりません。そのためには営業活動が重要となってきます。就労継続支援A型の営業活動には、二つのアプローチがあります。一つは、自分たちの施設がどのような仕事が得意で、競合他社や他施設とはどのように差別化ができていて、いくらで請け負うことができるのかということを、外部に打ち出していくことです。ここには自分たちの作っている製品を売り込むことも含まれます。もう一つは、新しい仕事の創出に向けた営業活動です。外部の様々な業種の人たちと打ち合わせを重ねる中で、他社の業務の一部を委託してもらえないかということを、常に考え提案していくのです。その際、闇雲に話をしていくのではなく、障害者福祉施設や障害者の就労・社会参加に理解のある企業をターゲットとして営業活動を行う方が効率的です。

 

経営現状分析と収益向上

営業活動を行いつつ、現在の施設の経営分析も行なっていかなければなりません。売り上げ、経費、利益、賃金について経営者の視点で、経営分析を行います。賃金よりも利益が上回っていなければ、就労継続支援A型の収益事業が軌道に乗っているとは言えません。賃金よりも利益が下回っている場合は、当然、就労事業を見直さなければなりません。事業の運営上の改善をはかればいいのか、営業活動に力を入れるべきなのか、あるいは新規事業を立ち上げるべきなのかを検討し、事業展開の方向性を修正していきます。

 

事業責任者の選定

就労継続支援A型には、施設管理者はいます。しかし、収益事業における事業責任者が選定されていない場合があります。一般企業と同じように、事業責任者がいて、事業計画を立て、目標達成に向かって進んで行くという構造がなければ、収益事業は軌道に乗りません。まずは、事業責任者を選定しましょう。

就労継続支援A型の職員の役割

就労継続支援A型の生産性向上を目指すにあたっては、職員の役割が非常に重要です。職員の姿勢、取るべき行動、職員の育成について説明します。

 

利用者の活躍を支援

職員はあくまでも、施設利用者を支援する役割を担うのだということを、常に念頭に置いていなければなりません。収益事業の運営において、職員が主体となって動いてしまった方が効率的になる場合もあるでしょう。しかし、あくまでも主体は利用者であり、職員は裏方として利用者をサポートする姿勢でいなければなりません。利用者が自分の能力を発揮して、生き生きと仕事に従事していなければ、結局のところ施設への定着は難しくなり、就労継続支援A型の経営を安定させることはできなくなります。

 

職員間のディスカッションの必要性

施設に利用者が通ってきて、充実感を感じながら働け、賃金を得る。この一連の流れを、福祉サービスとして提供するためには、職員間のディスカッションがとても重要です。良い福祉サービスとは何か、どうしたら良いサービスが提供できるのか、毎日話し合って、日々改善していきましょう。職員間のディスカッションは、欠かすことのできない主要業務であることを、職員は認識している必要があります。

 

人材開発と組織開発

職員の資質向上のためには、人材開発と組織開発の双方の観点を持つことが効果的です。人材開発は、職員個人の障害者支援に関する知識・技術の向上のための研修受講などです。組織開発は、職員同士の関係性に良い変化を起こせるよう働きかけることです。そのための基礎となるのは、施設の存在意義、目指す姿、行動指針を全職員が確認しておくことです。その上で、施設の課題を絞り込み、職員同士の関係性を改善させていきます。

就労継続支援A型のリスク管理

就労継続支援A型の経営成功のためには、リスクを減らすことも重要なポイントです。リスク管理について説明します。

 

雇用契約にかかるリスク

施設と利用者は雇用契約を結びます。契約後に、「こんなはずじゃなかった」「思ったように稼げない」「好きな仕事をやらせてもらえない」などという不満を利用者が感じてしまったら、経営上のリスクとなります。リスクを発生させないためには、契約前に、利用者の障害特性、経歴や家族関係も含めた背景、得意なこと、好きなこと、苦手なことなどについて徹底的に話し合っておくことが有効です。利用者についての十分な理解をもとに、どんな仕事をどの程度担当してもらうのが良いのか判断していきます。

 

利用者間のトラブルにかかるリスク

多様な障害を抱えた、多数の利用者が施設に集まって、仕事を行うのですから、トラブルの発生をなくすことは困難です。利用者間のトラブルにかかるリスクを減らすためには、まず職員が、起こりうるトラブルを想定しておくことが重要です。そして、トラブル発生の場合は、早期に対応し、事を大きくしない配慮が必要です。トラブル対応の基本となるのは、障害についての知識と、利用者個人に対する理解です。

 

虐待にかかるリスク

施設を運営していく以上は、職員による利用者への虐待をなくすための対策は必須です。虐待については、十分な研修を行うことが必要ですし、繰り返し、虐待をしないように確認する機会を設けなければなりません。虐待にかかるリスクをゼロにしていかなければ、施設運営はできません。

訓練等給付費と助成金

就労継続支援A型の経営上重要な、訓練等給付費と助成金について説明します。
 
 

訓練等給付費と賃金

利用者への賃金及び工賃を訓練等給付費から支払うことは原則禁止です。この基本をないがしろにしてしまっては、就労継続支援A型の経営は中長期的には決して安定しません。ですから、必ず収益事業を軌道に乗せなければならないのです。

 

特定求職者雇用開発助成金

経営を安定させるためには、活用できる助成金は最大限活用しましょう。特定求職者雇用開発助成金は、障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(長期雇用)として雇い入れる事業主に対して支給されるものです。ただし、対象となる利用者の離職割合が25%以上の場合は不支給となるので、利用者の定着が重要となります。利用者に安定的に通所してもらえるように事業展開と、利用者支援を行なっていきましょう。

ソーシャルビジネスとしての就労継続支援A型

収益事業が必要であるとはいえ、就労継続支援A型は福祉施設であり、ソーシャルビジネスです。ソーシャルビジネスとしての特質を理解していなければ、経営成功にはつながりません。ソーシャルビジネスとしての就労継続支援A型について説明します。

 

ソーシャルビジネスに求められるもの

ソーシャルビジネスに求められるものは、社会貢献性、事業性、革新性の3点です。就労継続支援A型を当てはめてみると、社会貢献性は、障害者の就労への支援です。事業性は、訓練等給付費を受けつつ収益事業を展開していくことです。ポイントは、最後の革新性です。障害者の就労が社会に浸透していくことによって、新しい社会的価値が創出されることを目指すべきなのです。効率のみを追求してきた社会に、共生という概念を注ぎ、障害がある人もない人も暮らしやすい新しい社会を作り出すというビジョンを忘れずに持ち続けていくことが、就労継続支援A型の存在価値を高めます。

 

経営成功のポイントは利用者の背景を理解すること

ソーシャルビジネスとしての就労継続支援A型を発展させていくためには、利用者の背景を理解し、適切な福祉サービスを提供することが重要です。利用者の社会参加が進むことによって、結局は、就労継続支援A型の経営が成功することにつながります。

まとめ

就労継続支援A型の経営成功のためには、収益事業を軌道に乗せることが必要です。生産性向上を目指すにあたっては、職員の役割が非常に重要です。また、経営上のリスク管理も重要なポイントです。また、活用できる助成金は最大限活用しましょう。就労継続支援A型のソーシャルビジネスとしての特質を理解した上で、経営成功のポイントをおさえて、経営の安定・発展につなげましょう。