フランス料理店を譲渡・売却(M&A)するのは、閉店するよりもメリットが多い理由

世界3大料理の1つとして名高い「フランス料理」。日本では明治初期からフレンチが伝えられ主に宮内省で国賓などの高貴な来賓客をもてなす料理として提供されていました。日本が高度経済成長を迎えた昭和45年(1970年)頃からホテルオークラや帝国ホテルなどでフランス料理店が相次いでオープンし、「高級料理」の代名詞になりました。現代でもフランス料理=高級というイメージは健在しており、ミシュランガイドでも星を獲得するフランス料理店が多く、高貴なレストランとして飲食業界に君臨しています。近年では気軽にフレンチが楽しめる「カジュアルフレンチ(ビストロ)」や、宿泊とレストランが一体化した「オーベルジュ」、木村拓哉さん主演のドラマで人気が再燃したドレスコードや年齢制限がある「高級フレンチ(グランメゾン)」など多様性のある店舗が増えてきました。

フランス料理業界の市場環境と現状

かつてのグルメブームで人気を博した「フランス料理」。贅沢な高級レストランとして店舗数を増やしてきましたが、現在では多様化が進み様々な趣向の店舗が日々誕生しています。そんなフレンチレストランの「今」と「これから」を見ていきましょう。
 

フランス料理業界の市場規模

フランス料理業界の市場規模は約3,500億円程の規模があり、全国には約8000件程のフランス料理店が軒を構えています。現代では「グランメゾン」「オーベルジュ」「ビストロ」「ブラッスリー」様々な種類の店舗がありますが、まだまだ利用者には高級料理というイメージが定着していることもあり、高単価なお店が大半を締めています。

「グランメゾン」ドレスコードや年齢制限がある高級レストラン
「オーベルジュ」宿泊とレストランが一体となったリゾート
「ビストロ」フランス料理とワインの組み合わせを楽しむカジュアルフレンチ
「ブラッスリー」フランス版ビアホール フレンチおつまみとビールを楽しむ大衆酒場
 

フランス料理業界の市場動向

高級料理の代名詞ともなっている「フランス料理」は、現在でも高級イメージは根深く、コアなファンは多いものの、客単価が高いことで庶民との距離が縮まらず、売上・客数・客単価は微増微減を毎年繰り返していました。近年では3,000円で食べれるフランス料理というテーマのもと、2011年の「俺のフレンチ(俺の株式会社)」が登場しました。コースではなくアラカルト料理にしたことで「たくさんの種類を少しづつ楽しめるメニュー展開」、スタンディング(立ち飲み)にしたことで「回転率をあげる店舗展開」が功を奏し通常のフランス料理店の約3倍の回転率を実現。連日行列が出来るほどの人気ぶりでした。
フランス料理市場にも多様化の波が到達し、フランス料理=高級という定着した印象をいかに覆し、需要にあった店舗展開が必要な時代に差し掛かっているともいえるでしょう。
 

フランス料理店の現状

「フレンチ=高級」この印象によって消費者を消極的にさせてきた「フランス料理」。現在では「俺のフレンチ」の流行や、ドラマ「グランメゾン東京」の人気、有名シェフの「YouTube配信」などにより、フランス料理のイメージが変わりつつあります。フレンチの有名店「ポール・ボキューズ」では「YouTubeを使った料理教室」や月会費でレストランを楽しめるサブスクリプションサービスの開設、ワインとフランス料理が家庭で楽しめるUberEatsを使ったテイクアウトデリバリーサービスを実施しており、コロナウイルスの影響を逆手に取ったビジネス展開で注目を浴びています。レストラン展開だけではなく、様々な視点からフランス料理を楽しめるよう工夫する企業が多くなってきました。

フランス料理店 M&Aにおけるチェックポイント

フランス料理店は高級レストランから大衆カジュアルフレンチまで数多くの業種があります。フランス料理は高級というイメージも強い為、お客様には料理やサービスに加え、外装やインテリア、食器やカトラリーなどの小物まで細かい専門性が要求されます。M&Aにおける買い手の心理としても消費者同様、運営とは別に「お店のこだわり」や「顧客に合わせた柔軟性」をチェックされることも多くあります。
 

買い手がつきやすい店舗の特徴

フランス料理店の場合、「立地エリアに合わせた店舗作り」が重要ポイントとなります。高級なイメージが強い為、立地に適合していない「客単価」や「店づくり」はとても目立ちます。高級繁華街なら「グランメゾン」、住宅街なら「ビストロ」、駅前なら「立ち飲みブラッスリー」など立地に合ったフランス料理店に買い手がつきやすい傾向にあります。
 

フランス料理店 売却の注意点

フランス料理は料理によって色々な調理方法があることでも有名です。電気・ガス・水道などは高容量が好まれ、厨房機器もコンベクションオーブンなど特殊な機器も多いので、そのようなインフラや機器をしっかり整備しておくことが重要です。買い手が内見に来た時に「故障している」や「ずっと掃除していない」なんてことが無いように注意しましょう。そしてワインセラーなどもしっかりと手入れしておくことでさらに好印象を与えることが出来ます。
 

買い手がチェックしているポイント

フレンチレストランはテーブルや椅子や照明などの「内装」から食器やカトラリー装飾品などの「小物」にいたるまでこだわりを強くして個性を出す店舗も少なくありません。買い手の心理としてはその「こだわり」も含めた店舗の価値として内装や外装・小物まで細かくチェックします。中には高額な調度品なども含まれている場合も多いので、あらかじめ譲渡希望額をリストにし提出するのも買い手の印象をアップさせるテクニックの一つです。
 

フランス料理店 M&Aの動向と現状

フランス料理店は高級店と低価格帯のカジュアル店との二極化が進んでおり、特にカジュアル路線でのベンチャー企業による新規参入型のM&Aが活発化しています。都心部を中心とするシェアリングデリバリーやテイクアウト事業へ積極的な投資が行われています。フランス料理も同様に現代の顧客のニーズにあったサービス展開ができる柔軟な店舗ほど買い手がつきやすい傾向があります。

フランス料理業界が抱える課題と対策〜まずは自社の価値を上げる〜

フランス料理業界が抱える一番の課題は「高級」というイメージです。かつてのグルメブームで「キュイジーヌ」や「グランメゾン」などの高級フレンチレストランが増加しました。しかし近年になり低価格志向やイタリアンなどの他ジャンルの台頭で、本格フランス料理は日本人の食生活になじみにくいというイメージになりつつあります。そんな課題・問題を解決すべく3つのキーワードで自社の価値を上げる方法をお伝えいたします。

 

自社の色(特色)をはっきりさせる

ひとくちにフランス料理といっても、「本格フレンチを提供する高級グランメゾン」「グラスワインとおつまみなどの小料理提供をする手軽なビストロ」「ビールをメインにフランス料理を手軽に楽しむのブラッスリー」など様々な特色があります。「街のフランス料理屋」というざっくりとしたイメージではなく、自店の特色がどれにあたるのか?地元の色とお店の色が合っているか?など自社でのフランス料理の提供の仕方を再度分析し、地域に合わせたお店の運用が急務となります。
 

メニュー構成を再検討する

実は日本でもまだまだ知られていないフランス料理。フランス料理といえばというランキングでは「キッシュ」や「ガレット」「ラタトゥーユ」「ポトフ」などが知られていますが、日本人になじみの料理が実はフランス料理だったという料理はまだまだ多く存在します。「グラタン」や「コロッケ」「オムライス」「フライドポテト(フレンチフライ)」「ハンバーガー」なども実はフランス発祥の料理です。「洋食屋」で提供されるなじみの料理はそのほとんどがフランス料理だったりします。本格メニューはもちろんですが、このような日本人になじみのメニューを多く入れることでお客様にアピールすることも大切になります。
 

他店と差別化する方法

フランス料理には、伝統的な技法が多くいろいろな調理法があります。その料理法は最近主婦たちの中で注目されています。日本テレビ「沸騰ワード10」で主婦たちに爆発的な人気を博している「家政婦の志麻さん」ことタサン志麻さんは元フランス料理人。フランス料理の技法を日本の家庭料理に生かしレシピ本は10万部を突破しレシピ本大賞にも選ばれています。実店舗でもフランス料理の技法を提供するために料理教室などをランチタイムに開催したり、料理方法をYoutubeで配信し主婦層を味方にするなど、店舗運営とは違う角度で集客を上げることで他店との差別化が図れます。

フレンチレストラン M&Aの成功事例

東京都港区のフレンチレストランのM&A案件です。ここはオーナーシェフが有名で、会社でもYoutubeやSNSでの配信も積極的に行い、ブランド力がありました。店舗としては1店舗(30席以下)でしたが、買い手からは多店舗展開が目指せるとして、約3億円ほどでの株式譲渡がありました。今回は会社全体で店舗のブランド化を推進してきたことが、大きく売却価格をあげるポイントとなりました。