ラーメン屋を譲渡・売却(M&A)するポイント!廃業・撤退するよりもメリットあり

日本の国民食といわれる「ラーメン」昔から多くの人に愛されてきました。小さい店舗でも戦える外食ジャンルとして新規参入企業も拡大しており、近年の不況の中でもM&Aは盛況な状況にあります。新規参入や事業拡大においてもリスクマネジメントは重要とされ、「少ないコストで大きな利益を産む可能性があるM&A」は今だからこそ注目されています。その一方で、これからの事を見据え「経営されているビジネスの引退」や「売却した資金で新たなチャレンジ」をする経営者が増えてきているのも現状です。そこで今回は実際に売却・譲渡された事例を踏まえ、相場より高く買い手がつく為の様々なポイントをご紹介します。

ラーメン業界の市場環境と現状

ラーメン屋は日本中の至る所で見かける程、日本の外食産業を支える大きな市場規模があります。1970年頃の家系ラーメンブームと皮切りに今年2021年まで安定した市場推移を保っており国民食となっています。ラーメン業界はチェーン店に比べると個人経営が圧倒的に多く、個人経営者サイドからも少ない資金で開業でき回転率も高く為、外食産業の中でも人気の業種となっています。
 

ラーメンの市場規模

ラーメン屋(店舗)としては2020年3月の時点で全国で約26500店舗で売上としては約6000億円を超える市場規模があり、即席麺を含めた麺業界総合の市場としては約1兆5000億円の大きな市場があります。最近ではラーメン自体1杯1000円を超える店舗も多く、様々なニーズがある中で多様化してきました。
 

ラーメンの市場動向

以前までは中華料理店のようなラーメン意外にも様々なメニューが存在するいわゆる「中華屋さん」が主流でしたが2000年頃からご当地ラーメンブームが始まり、ラーメンのみを提供する現在の「ラーメン屋」が誕生しました。現在では高級食材を使った高級店やビーガン(野菜食)やハラル(イスラム食)など外国人に合わせたメニュー開発も盛んに行われています。ここ数年はコロナウィルスの影響で売上も減少傾向にありましたが、逆にテイクアウトやコンビニのチルドラーメンが人気を博し、ラーメンもより多様性が求められる時代に突入しました。
 

ラーメン屋の現状

一方では、ブームに乗った新規店が続出し生き残り競争が激化し各地域で同業店舗の乱立や他のファーストフード店との競争なのでレッドオーシャン(デフレ化)傾向にあることも無視できません。これからの時代は、ただ美味しいラーメンを出すだけではなく時代のニーズにあった戦略を立てることが必要になります。最近ではUberEatsなどの宅配需要がより激化しテイクアウト市場が活性化されたり、ブランド化されればコンビニやカップ麺メーカーとのタイアップも積極的に導入する経営者も増え、今後はより競争の差別化が強くなると予想されます。

ラーメン屋 M&Aにおけるチェックポイント

競合ひしめくラーメン業界では今も激しい競争が続いています。大型チェーン店の台頭により競争もさらに加速しました。新店舗の乱立によって経営状況が悪化し閉店、個人では後継者が見つからずに廃業などといったケースも少なくありません。しかし、M&Aの実施で閉店や廃業をせずに経営基盤を引継ぎ、継続させることが可能になります。買い手売り手ともにしっかりとメリットが出るよういくつかのチェックポイントを作りました。

買い手がつきやすい店舗の特徴

ラーメン屋におけるM&Aでもっとも買い手がチェックするポイントが「立地(外部環境)」と「内部設備(内部環境)」です。買収を検討するに当たり、買い手は必ず外部環境と内部環境をチェックします。それぞれポイントをみていきましょう。

立地

立地は外的要因となり場所の価格として考えられがちですが、大切なのは「立地と店舗規模のマッチング」です。ファミリー層を意識した立地であれば「駐車場の完備やテーブル席の確保がされているか?」など、駅近の立地であれば「ビルの1階や回転効率がよいの店舗配置になっているか」など場所だけではなくその場所にマッチした店舗なのかどうかを判断されます。立地における自店の特徴をしっかりと理解し、立地と店舗の相性を買い手にアピールすることが出来るお店が買い手がつきやすくなります。

内部設備

ラーメン屋で特に重要な内部設備はダクトとグリストラップです。油汚れが出やすい環境から「しっかりと完備されているか」がとても重要になります。もちろん完備されているだけではなく、定期的にしっかりと清掃されているかもチェックされ清潔さに懸念をもたれると買い手が付かない場合もありますので注意が必要です。日々の清掃業務をマニュアル化し定期的に衛生管理をしているお店が買い手が付きやすく高値が付きやすい傾向があります。

 

ラーメン屋売却の注意点

ラーメン屋のM&Aで事業継承する場合の最も注意すべきポイントは「味の継承」です。店舗特有のスープや麺、具材を含めラーメンの味はその店の資産であり、店主が大事に育ててきた商売道具でもあるのでなるべく引き継ぎたいのは当然の事です。しかしM&Aで第三者に事業継承する際は、店主本人が以降の経営に関われるケースが少ない為「味の継承」が難しいとされています。
とはいえ、大手チェーンに事業継承することが出来れば個人店にはない豊富な資金力で味をさらに追求することができ、FC基盤を使って全国へ店舗拡大も夢ではありません。
M&Aを検討しているのであれば、まず自身のらーめんの魅力を改めて理解し、マニュアルの作成など「味の継承」の課題を少しでも克服出来る様心掛けていくことが重要です。

 

買い手がチェックしているポイント

飲食業界M&Aで買い手が特にチェックしているポイントを2つご紹介します。

人事<未払いの残業代や退職金がないか>

飲食業界の人手不足は日に日に深刻化しています。そんななかでこのような未払いが発覚すると極端に事業価値が下がります。これは店主(売り手)とスタッフとの信頼関係に結びつく問題で、事業継承後スタッフ退職が相次いだり、支払いの請求があったりとトラブルの原因になるような事を買い手は特に注意しています。

設備<設備投資に資金をかけすぎていないか>

「設備投資をすれば事業価値も上がる」このような考え方を持ち積極的に設備投資をする店主も少なくありません、がしかしそれが逆に買い手側に悪い印象を与えてしまう事があります。厨房を新しくして作業効率を上げ実際に売上も上がった場合でも、買い手がもし「厨房を新しくしないでも作業効率をあげるノウハウ」を持っていたら、その設備投資はリスクになります。また内装にこだわりくつろげるおしゃれな店舗を作った場合でも、買い手が回転率を重視する経営方針の場合は無駄な経費となる可能性も少なくありません。
設備投資をする前によく考え、お金を掛けずに事業価値の上がる検討をしてみてはいかがでしょうか?
 

ラーメン屋M&Aの動向と現状

近年、多様化する顧客ニーズに合わせ関連する飲食業界からの参入が増加傾向にあります。
M&Aによってラーメン屋を買い取る事で新規参入にかかるコストを押さえることが出来るのが大きな理由です。ラーメン業界は今後も様々なスタイルが誕生しより活性化していくことが予想されるため今後もM&Aによる新規参入は増えていくと思います。

ラーメン業界が抱える課題と対策〜まずは自社の価値を上げる〜

昼時に街を歩くと行列の出来るラーメン屋が多くあります。繁盛店ともなると常に行列ができ、いつも満席状態。そんな繁盛店でも利益が沢山出ているかというと、現状は大きく異なります。「忙しいのに儲からない」そんな現実を打破すべく「儲かる繁盛店」に変えるポイントをいくつかご紹介いたします。
 

利益を上げる為にやること

ラーメンの収支として「原価率30%」「人件費30%」と等の基準数値があります。高収益の繁盛店の特徴はこの基準数値を大きく逸脱しているケースが多く実例を2事例ご紹介しますのでご参考にしてみてください。

<カウンターのみ&メニュー数を絞った低コスト経営>

カウンターのみの席にすることとメニュー数を絞った事でクオリティーをキープしながら人員を削減することに成功しました。結果として人件費が30%→15%まで減少し収益アップにつながっています。

<テイクアウト&ネット通販事業に参入>

コロナ渦の影響で自宅での食事需要が高くなったタイミングを見計らい、「生めんとスープのみ」のテイクアウトとネット通販を開始しました。具材はオプションでの注文とし開始した所、来店客数を大きく上回る食数の販売を記録。作業は発送業務のみの為人件費および原価を大幅に削減することに成功しました。
 

生産性を上げる為に必要なこと

ラーメン店に限らず飲食店で生産性の向上は重要課題として各社取り組んでいます。
実際に取り組みによって生産性を向上させた実例をご紹介します。

<スマホで確認できるマニュアル作成>

麺茹で作業から仕上げまでの作業工程を標準化(マニュアル化)し、スマホで誰でも気軽に見れる様にしたことにより作業クオリティの均一化に成功。これにより業務効率があがり営業利益率が0.5%改善しました。スマホにマニュアルを落とし込めた事で時間の空いた時にすぐ確認することができ、スタッフの成長速度が早くなりました。

他店と差別化する方法

近年のラーメン多様化にともない、お店の差別化は必須条件となりつつあります。現状の店舗を少し工夫するだけで他店との差別化を図ることができるいくつかのポイントをご紹介します。

<商品を今一度見直す>

熱いものはしっかりと熱いか?ごはんはほくほくに炊けているか?海苔は湿気ていないか?顧客が求める「当たり前」が実際には出来ていない店舗を多く見かけます。差別化は味だけでなくこの「当たり前」が出来ることも出来ていない店舗が多いからこそ、差別化できる大きな要因となります。

<サービスを見直す>

顧客が求めているサービスと提供しているサービズを今一度見直しましょう。顧客が求めているサービスは立地場所や人によって違います。学生街なら「学割」や「大盛」「ごはんサービス」など。ビジネス街なら「スピード」や「スーツが汚れないような前掛け提供」。住宅街なら「子連れケア」や「出前導入」など、顧客に合ったサービスを見直す事でリピート率が上がり、必然的にそれが差別化になります。

ラーメン屋 M&Aの成功事例

最近起こったラーメン業界のM&A事例をいくつかご紹介します。
 

つけめんTETSU

魚介系つけめんが主要商品で途中で焼石をスープに入れ最後まで熱々のつけめんを食べられるというサービスを考案したことでも有名な「つけめんTETSU」創設者である小宮社長は3店舗目を出店するタイミングでM&Aを検討しました。ラーメン屋は「3店舗目が難しい」と言われる業界で、「つけめんTETSU」は事業拡大を目指しコンサルティング会社へ相談を持ちかけます。結果的には株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスとのM&Aが成立し資本提携を結びました。その判断が功を奏し現在では27店舗の拡大に成功しています。

 

ラーメン天華

北関東を中心に9店舗を展開する赤味噌ラーメンが主要商品の「ラーメン天華」1997年の設立から地元顧客に愛されてきたラーメンチェーンですが、2019年に国内427店舗のラーメン屋を展開するギフト社の子会社となるM&Aが実施されました。買い手としては事業拡大として北関東エリアへの積極進出や天華独自の赤味噌ラーメンを商品開発力の底上げの目的がありました。現在も業態を変えず地元から愛されるラーメン屋を継続しています。